戦争と平和(ウラン235)
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原子爆弾(ウラン型)において、爆発が連鎖的に続くために必要な最低限の物質の量のことを「臨界量」(りんかいりょう)、あるいは「臨界質量」(Critical Mass)と言います。
この現象を理解するためのポイントをまとめました。
1. 臨界量とは
核分裂性物質(ウラン235など)が核分裂を起こすと中性子が飛び出しますが、物質の量が少なすぎると中性子が外に逃げてしまい、連鎖反応が止まってしまいます。 物質がある一定の量(密度や形状も関係します)に達すると、逃げる中性子よりも次に核分裂を引き起こす中性子の数が上回り、爆発的な連鎖反応が維持されます。この境界線の値が「臨界」です。
2. 原子爆弾の仕組み(臨界超過)
原子爆弾は、通常時は「臨界」に達しないように分割して保管されており、爆発させる瞬間にそれらを合体させて、臨界を一気に超える「臨界超過」の状態を作り出します。
- 広島型(ウラン型): 「ガンバレル型(砲身型)」と呼ばれます。筒の両端に臨界量に満たないウランを配置し、火薬の力で一方をもう一方へ高速で衝突させることで、瞬時に臨界量を超えさせ爆発させます。
3. 用語の整理
- 臨界 (Criticality): 核分裂の連鎖反応が一定の速さで継続している状態。
- 臨界量 (Critical Mass): 臨界状態を維持するために必要な最小限の質量。
- 臨界超過 (Supercriticality): 連鎖反応が急激に増大する状態。原子爆弾はこの状態を利用します。
ちなみに、ウラン235の場合、単体で球体にした時の臨界量は約52kg(直径約17cm程度)と言われていますが、周囲を中性子を反射する材料で囲むことで、より少ない量でも臨界に達させることが可能です。



濃縮ウランって?
濃縮ウランは、天然のウランの中にわずか 0.7% ほどしか含まれていない「燃えやすい(核分裂しやすい)ウラン」の割合を、人工的に高めたもののことです。
原子力発電や研究、あるいは軍事利用など、目的に合わせて濃度を調整して使われます。
1. ウランの「2つの顔」
天然のウラン鉱石から取り出したウランには、主に2つの種類(同位体)が混ざっています。
- ウラン235(燃えるウラン): 核分裂を起こしてエネルギーを出す。天然には約 0.7% しか存在しません。
- ウラン238(燃えないウラン): 核分裂しにくい。天然ウランの約 99.3% を占めます。
そのままの状態では「燃えるウラン」が少なすぎて、効率よくエネルギーを取り出すことが難しいため、「濃縮」という工程が必要になります。
2. 濃縮の度合いと用途
ウラン235をどのくらいまで高めるかによって、用途が大きく変わります。
| 種類 | ウラン235の濃度 | 主な用途 |
|---|---|---|
| 天然ウラン | 約 0.7% | 重水炉(カナダ型など)での発電 |
| 低濃縮ウラン | 3% 〜 5% | 一般的な原子力発電所(軽水炉) |
| 中濃縮ウラン | 5% 〜 20% | 研究用原子炉、医療用アイソトープ製造 |
| 高濃縮ウラン | 20%以上(軍事は90%〜) | 原子力潜水艦の燃料、核兵器 |
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3. どうやって濃縮するのか?
ウラン235と238は化学的な性質が全く同じで、わずかな「重さ(質量)」の違いしかありません。そのため、化学反応ではなく物理的な方法で仕分けます。
- ガス化: ウランをフッ素と反応させて「六フッ化ウラン」というガスにします。
- 遠心分離法: ガスを巨大な筒(遠心分離機)に入れて猛烈な速さで回転させます。すると、わずかに重いウラン238が外側に、軽いウラン235が中心に集まります。
- 回収: 中心に集まった「濃いガス」を取り出し、この工程を何千回、何万回と繰り返して濃度を上げていきます。
4. なぜ「濃縮」がニュースになるのか?
濃縮ウランを作る技術(遠心分離技術など)は、「発電用の燃料を作る技術」と「核兵器の原料を作る技術」がほぼ同じであるためです。
3〜5%まで濃縮すれば発電に使えますが、そのまま機械を回し続けて90%以上にすれば、核爆弾の原料になってしまいます。そのため、国際原子力機関(IAEA)などが厳重に監視を行っているのです。
●プルトニウム
プルトニウム(特にプルトニウム239)が原子力発電や特定の用途で使われるのには、主に効率性と資源の有効活用という2つの大きな理由があります。
1. 核分裂が起きやすく、エネルギーが強力
プルトニウム239は、ウラン235と同じように「核分裂」を起こしやすい性質を持っています。特に、中性子を吸収して分裂する確率が非常に高く、わずかな量で膨大なエネルギーを取り出すことが可能です。
2. ウラン燃料から「作り出す」ことができる
自然界にある天然ウランの約99.3%は、そのままでは核分裂しにくいウラン238です。しかし、このウラン238が原子炉の中で中性子を吸収すると、プルトニウム239に変化します。
- 資源の再利用: 発電に使用した後の「使用済燃料」からプルトニウムを取り出し、再び燃料として使うことができます(これを核燃料サイクルと呼びます)。
- MOX燃料: 取り出したプルトニウムをウランと混ぜた「MOX燃料」として、一般的な原発(軽水炉)で使う「プルサーマル発電」が行われています。
3. 特殊な用途(宇宙探査など)
発電所以外では、プルトニウム238という種類が「原子力電池(RTG)」に使われます。 これはプルトニウムが崩壊するときに出す熱を電気に変えるもので、太陽光が届かない深宇宙を旅する探査機(ボイジャーや火星探査車など)の長期的な電源として非常に優秀です。
まとめ
簡単に言うと、「本来は燃えにくいウランを、燃える燃料(プルトニウム)に変えて再利用することで、エネルギー資源を長持ちさせるため」というのが最大の理由です。
ただし、プルトニウムは毒性が強く、核兵器への転用も可能な物質であるため、その取り扱いには極めて厳格な国際的な管理が必要とされています。
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